ウィジェットをめぐる冒険 その2 ウィジェットの語源


その1はこちら


今日は『ウィジェット』の語源についてです。

ウィジェット』は英語で『widget』と綴ります。
検索していてこんなサイトを見つけました。


The alt.usage.english Home Page


英語の語法をアーカイブしているサイトのようです。



そこにwidgetの起源も載っていました。


"widget"



これによると、『widget』はブロードウェイの劇作家、ジョージ・S・コーフマン*1という人が同じく劇作家のマーク・コネリーという人と共作で作った1924年の作品、『Beggar on Horseback』*2という戯曲の中で用いられた造語なのだそうです。


金持ちの実業家の娘と結婚した主人公の作曲家が、つまらない仕事に身を投じて飽き飽きしている中での、義理の父である実業家との会話。そこに世界で初めて『widget』が出てきます。以下は引用。( )内は私のつたない訳です。

(Father-in-law): Yes, sir! Big business!
(義理の父):(まったく! ビッグビジネスだよ、君!)


 Yes. Big business. What business are we in?
 (ええ、たしかに大そうなビジネスですよ。でもなんのビジネスなんでしょうねえ?)


 Widgets. We're in the widget business.
ウィジェットだとも。我々はウィジェット・ビジネスを興じておるのだ。)


 The widget business?
ウィジェット・ビジネスですって?)


 Yes, sir! I suppose I'm the biggest manufacturer in the world of overhead and underground A-erial widgets.
(そうだとも! 君。私はこう思うのだ、私こそがウィジェットだらけのこの世界で最大の生産者なのだ、とね)


わけがわかりませんね。
自分で書いてなんですが、訳も誤訳な気がします。
A-erialって何なんでしょう。空中の、という意味の『aerial』のことでしょうか。それともこれも造語でなのしょうか。


リンク中でも述べられてるように、劇中ではwidgetが何を指すのかまったく説明がないそうです。
おそらく『gadget』を連想させる言葉として造られたようだ、とのこと。


つまり、『widget』という言葉が生み出されたときには、しっかりした定義はなかったのです。
84年前。当然インターネットなんてものはなかった時代に、演劇の一要素として造られたひとつの単語。
それが『widget』なんですね。


劇ではどのような文脈と演出でこのシーンが演じられるのかは分かりませんが、リンク先の文章を読んでいると、
資本主義や機械的な産業への恐怖や疑念、風刺のようなものが背景にあるように感じます。


生みの親のコーフマンさんは、現代のウィジェット事情を見てどんなことを思うのでしょう。まさかあの『widget』がこんな風に展開するなんて。想像だにしていなかったことでしょう。
これはロマンを感じますね。



今日はここまで。長くなってしまいました。
次回もお楽しみに。

下地

*1:ちなみにこのコーフマンさん、かなり多作な人だったよう。1932年にはピューリッツァー賞もとっています。後にハリウッドで映画化された作品もたくさんあるそう。wikipedia参照

*2:この作品の邦訳は見つけられませんでした